アウトドアブランドもタウンユースできるようなデザインが多くなってきた昨今、豪雨でも水を通さない素材を使ったアウターを着ている人を街で見ることも多くなってきた。
特にメンブレン業界の巨人「GORE-TEX(ゴアテックス)」はブランディングもバッチリなので、コラボレーションかのようにロゴが入っていることで製品の信頼性アップに一役買っている。
実際、ゴアテックスは製品化されたものが厳しいテストをクリアしないとロゴを表記できないことになっており、ロゴが入っているものは一定の基準をクリアしたものになっているようだ。
技術力もさることながら、ビジネスセンスを感じる。
そういうわけで私も一人の男なのでハイテク素材は大好きなのだけれども、服としての着心地とか質感は天然素材が好きなのです。
コットン素材だってベンタイルみたいな雨を通さない素材もあるし、もっと撥水性能が欲しければパラフィン加工したものなどもある。
そもそも山やアウトドアの場合、傘を刺さないことも多いし、蒸れが体を冷やすことにもなるので透湿防水性能は命に関わるけど、街では基本的に傘をさすし、電車や車での移動が多い。
ましてやオフィスワーカーが屋外で風雨に当たる時間はかなり少ない。
そもそもタウンユースにはオーバースペックなのではないか?
かなりざっくりと各素材の防水性能「耐水圧」を調べてみた。
結論:ゴアテックス すごい
耐水圧 | 透湿性 /24h | 耐えられる天候 | |
Ventile®︎ | 700㎜〜 | 7,000g/㎡〜 | 小〜中程度の雨 |
ビニール雨合羽※ | 10,000㎜くらい | ほぼ0 | 短時間の雨 |
GORE-TEX®︎ | 50,000㎜〜 | 25,000g/㎡〜 | 嵐でも大丈夫 |
耐水圧というのは、生地の上に断面1㎠の筒を立てて水を入れていき、水が漏れずに耐えられる水の高さを測った数値です。
透湿性というのは湿度を通す性能のこと。
人は汗をかいている時だけでなく、知らず知らずのうちに水分を発している。ゴム手袋をつけてじっとしていても蒸れてビショビショになるのもそのせいだ。そんな状況あまりないけど。
運動を伴えばその量も当然増えるので、なるべく湿度を逃す素材の方が、快適に過ごせる。
湿度というのは体感温度にも関わってくるので、透湿性が良ければ防寒性は下がるとおもうのだけど、それはまた別の機会に検証したい。
素材のグレードや加工によっても数値は変わるので目安にしかならないが、機能性だけ見たらゴアテックスの圧勝。断面1㎠で長さ5mの筒に水が入ってる状況を見てみたい。
とはいえ数字に惑わされてはいけない。
ベンタイルの耐水圧でも普通の雨くらいであれば水が入ってくることはないし、コットンなので通気性は十分。コットンは水を含む膨らんで目が詰まるので、さらに水は入りにくくなるはず。
単純に機能性を見れば十分だと思う。
実際購入するとなれば生地の薄さや服のデザイン、価格も検討材料になるので、これだけで一概にどちらが良いとは言えないけれども。
また、高機能アウターのほとんどはポリエステルやナイロン など、素材としては環境に優しいとは言えない化学繊維でできている。
もちろん化学繊維でもサステナブルな取り組みが進んでいてリサイクルされたポリエステルやナイロンで作られた製品も出て入るけれど、100%リサイクル素材でできた製品はほんの一部だ。
しかも混紡されるとリサイクルできないので、焼却か埋め立てで処分することになる。
そのようなものをファッション感覚で気軽に手に入れて、流行が終わったり飽きたら処分するような使い方をすることには違和感がある。
アウトドアウェアは本来ファッション性より機能性を重視した「道具」なので、言ってしまえば包丁とかドライバーに対して「デザインが飽きたから変えよう」と言うようなものですね。(ちょっと違うけど)
服の着心地が良いことはとても良い事なのだけれども、街中で、ほとんど室内で暮らす我々に、そこまで高い防水機能は必要なのだろうか。
必要以上の機能を求めないということも必要なのかもしれないし、もっと、必要な機能もあるんじゃないかと思う。
いま世界では、衣服が環境に及ぼす影響とか大量廃棄が問題になっていて、それらを解決すべく多くのアパレルメーカーが動いている。製造工程での二酸化炭素排出量や、染色に使用する水の削減、リサイクル素材の開発・使用など。
それらの「環境に配慮した」というのも機能のうちに入っても良いと思う。
ものが溢れて、所有することの価値が見直されているが、それは少ない所有物それぞれの生産背景や作られた理由みたいなものにスポットライトが当たる機会でも増えてきている。
私たちは、それらの情報を入手し選ぶこともしやすくなっている。
ミニマリズムの概念はだいぶ普及してきたけれども、自分の生活と照らし合わせて、必要な機能を、必要なだけ手に入れるという「ミニマルな機能性」という考え方も、今後は必要になってくるかもしれない。